女性の脳力を活かした「働き方」実践~三州製菓の取組み
「〈第1回〉 一人三役ができる女性の脳力って?」
ご紹介
人が真に生きる・・・働く場の環境整備
三州製菓さんの「一人三役制度」は多くのメディアに取り上げられています。NHKの番組では三州製菓の一人三役制度を「働き方革命が日本を救う」と題して話題になりました。今回は、ズバリ、「一人三役」は社員の皆さんに本当に受け入れられているのか、そして社員さんは満足しているのか、を知りたいという思いからインタビューに伺いました。
社屋に入り、とにかく驚いたことは、床のすみずみ、窓にまで掃除が行き届いていることでした。早速、そのことを板垣マネージャーに伺うと、毎朝15分間、社長を筆頭に社員全員で清掃をしているそうです。そしてこの清掃は、「働く場の環境整備をしながら気付きの場である」という考え方に基づいているとのこと。また、社員への満足度調査で明らかになった問題は、間髪おかずに解決するそうで、女性のトイレは調査結果が出てから数日で再整備されたそうです。これもすべて、社員が働く環境整備へのこだわり。
この「働く場の環境整備」は「すべてのものを真に活かす」(社志)、「人が真に生きる経営を追求する」(社訓)に根差すものです。働く場が整ったら、社員が自らの潜在能力を引きだし、持てる能力を精一杯発揮できるように支援する、という次の「真に活かす」方法が必要になります。それが、一人三役なのです。「人が真に生きる経営を追求する」という社訓をご説明くださる斉之平社長の表情や言葉には、経営者としての信念、社員を信じるゆるぎなさを強く感じました。
一人三役は相互のいたわりから
さて、いよいよ一人三役制度をご説明します。まず、写真をみてください。これが今回、特別公開してくださった「一人三役」の業務シートです。縦軸には仕事の種類・内容、横軸には、達人、玄人、担当、補佐、新人などの業務遂行レベルが記載されています。この表をつくる際に、業務の漏れやダブりなどが発見でき、他部署間連携も実現できたそうです。業務遂行レベルは自己申告制というのも興味深い点です。
その理由は、次回の連載で詳しくご説明します。
緊急性と重要性のマトリックス
実際には、急な帰宅や突発休のような場合には、このシートをもとに、人員の配置を変えます。たとえば、Aさんは総務業務がメインで(玄人)ですが、工場の贈答品包装が(担当)で、工場の品質管理が(補佐)だとします。贈答品包装の社員が突発休の場合には、Aさんが緊急性に応じて、その代わりの業務をします。Aさんの業務は他の人が代行します。こうして、緊急性と重要性のマトリックスから人員配置が行われる仕組みです。この方法であれば、生産性は常に最適化できることになります。
脳力と仕組みづくり
この仕組みづくりには、斉之平社長の「脳力」を活かした仕組みづくり、正確には脳神経の中に「仕組みを作る」という理論が根幹にあります。人間の行動の97%は無意識行動であると言われていますから、「脳力」を仕組み化で活用することは生産性向上の観点からは有効な考え方であるといえるでしょう。
工場内では人員の欠員がでると、所属長が「一人三役表」から代行できる人に指示するのですが、総務では、社員が自分から代行しますと申出てくれるとのこと。まさに「脳神経に仕組みを作った脳力」なのです。
一人三役の業務シートには「代行できます!!」という文字が記載されています。多くの企業で、交代可能業務シートのようなものは目にしてきましたが、そのシートに「代行できます!!」の文字は初めてでした。自ら代行を申し出る仕組みが細かなところにまで施されています。三州製菓さんにとって大切なことは、「代行することにより、自ら潜在的な能力を活かす」ことに他ならないのです。
事業計画による社員と企業の合意形成ステップ
そしてこの仕組みが成功しているもう一つの要因には、一人三役、朝の15分清掃などを行動指針として明確に示していることが挙げられます。三州製菓さんでは、「事業計画」 という手帳が事業年ごと に配られます。その手帳には、社訓から社員に関する方針、委員会活動など、行動指針ともいうべき内容から「数字にかかわる」内容に至るまでの事業計画が記載されています。この事業計画は、採用時にも提示され、共感した人がパートナー社員や社員に採用されているのです。後出しジャンケンではないところが素晴らしい!
しかも、なんと、事業年ごと に配られる「事業計画」手帳の1ページ目には、毎年、一人ずつ、社長からの成長への期待と感謝が自筆で記されています。
今回は、本邦初公開!その感動の1ページ目を公開することに許可をいただきました!心がうれしくなります。ぜひ、声に出してお読みください。
次回は、一人三役制度の成果を別の角度から検証したり、パートナー社員さん、正社員さんのインタビューもご紹介します。
どうぞ、お楽しみに。